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東大女子限定ハッカソン Teatime Hackathon 2016 参加記録

東京大学Teatime Hackathon 2016のメンターを、GCLのRAとして引き受けた。Teatime Hackathonは、東京大学の女子学生を文理・学部大学院問わず集めて行うハッカソンである。今回のテーマは「日常に感動を」であった。メンターは、女子学生の技術サポートをする仕事だった。

 

実際に学生が作った作品は、「人形が舞台的に自動装飾してくれるお皿ロボット」である。料理と皿が渾然一体となって完成していく様を感じることができるだろう。

“”原価何十円としないパスタ料理は、盛り付ける皿によって値段は数千円へ跳ね上がる(トリコより)。””

 

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この作品のユースケースは、レストランと個人宅である。

レストランで、客が退屈に料理を待つ時間を有効活用して、皿の絵が「舞台的に」完成していく体験を提供できる。これによって、客は待ち時間の間、舞台的な自動装飾を楽しむことができるので、レストランは待ち時間を有効活用して付加価値を提供できる。客は、好みの柄を選ぶことができる。さらに、メイドカフェ・宇宙カフェなどでは、装飾の柄が、店のオリジナリティや価値にダイレクトに繋がる。また、チェーン店では料理人のスキルによって、装飾の質にムラができてしまうが、この皿を使うことで、美しい装飾を再現性高く施すことができる。更に、装飾にかける時間を短縮することで、仕事の効率化にも寄与する。

一方自炊では、どうしても皿が簡素になりがちである。レストランのフレンチやスイーツでは、皿の上のソースや粉砂糖の装飾が、料理を美しく演出する。自炊では時間的・技術的に到底作りえない美しい装飾を、この皿を使うことで、自宅で日常的に体験することができる。

 

今までにも、IoT的に皿を演出する作品はあったが、実際の食べ物を用いて装飾するというものはなかった。例えば、プロジェクションマッピングでレストランの待ち時間に動画を放映するものがあるが、放映と食が直接的に繋がっていない。放映されたソースは食べることができない。実際の食品で食べられる装飾を施すというのは、視覚・味覚的経験をダイレクトに繋げるという点で、従来にない革新的なIoTデバイスである。今後は、プロジェクションマッピングとの融合も視野に入るだろう。

 

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この皿はiPhoneで操作できるIoTデバイスである。将来的には絵柄をインターネット上のカタログから好きなものを選ぶことができるようになるだろう。更に、絵柄をユーザ自らが作成してアップロードしたり、インスタグラムのように「人気絵柄アーティスト」が誕生したりするかもしれない。また、今はかなり大きな皿になってしまっているが、機構を「机に埋め込む」ことで、薄い皿の上で同じことができるだろう。また、装飾するフィギュアは、自由に選ぶことができる。例えば、各レストランごとのマスコットキャラクターで装飾することで、広告にもなるだろう。また、現在は「粉砂糖をどかす」だけだったが、カッターを持たせて「肉を切る」、コテを持たせて「肉に焦げ目をつける」と言った応用もできるかもしれない。

 

 

 

この作品は、技術的に高度な作品である。この皿はiPhoneアプリから操作可能である。マイコンとして、Arduino Unoが2台、Konashiが1台内蔵されている。ArduinoとKonashiはシリアル通信でつながっており、iPhoneからの指令がArduinoに伝わるようになっている。外観には、レーザカッターで作品名が刻印されている。また、内部のロボットは3Dプリンタで出力された部品を組み立てている。アクチュエータはタミヤのギアボックスで、エンコーダはアルプス電機のメカニカルエンコーダが使われている。アクチュエータはタイミングベルトとプーリーを介して、直動に変換される。このロボットはP制御で任意の二次元座標にエンドエフェクタを移動可能である。エンドエフェクタにはネオジウム磁石が装着されており、皿の上の磁石付きフィギュアを操作する。さらに、更に何か食べ物が載った瞬間を検知し、皿の縁がLEDの光で演出される。材料費・加工費は、合わせて約15000円程度である(材料余剰分も含めると25000円)。

 

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僕は、この作品を作った「夜明けのはむチーズ」というチームのメンターだった。初めは、全部で7人(工学2人非工学3人メンター2人)のチームだったのだが、工学系2人とメンター1人が途中不参加となった。そのため、工学系のリソースが非常に少なくなってしまった。

 

全員の能力・バイタリティ・知識欲がすばらしかった。何を作るか決める段階から、長い会議にも関わらず生産性を落とさずにアイディアを出し続け、今回の作品の全体像を具体化した。また、女子学生にかなりの量の設計と実装を任せることができた。僕は、女子学生には不可能だろう設計のみを行った。僕が行った設計も、それに至る道を時間の許すかぎり教えながら、製作を行った。具体的には、「軌道設計用システム」「構造材の印刷」「回路設計」「プログラムの制御フロー設計」の四点は、不可能と判断して僕が設計した。逆に、例えば以下は女子学生が行った:「レーザーカッターの軌道計画」「外観の設計・デザイン」「ロボットのメカの構造設計」「回路実装」「P制御」「重さセンサイベントからのLチカプログラム」「実際のプログラミング」。ここまで来ると、東大のロボット学科(機械情報工学科)でも経験できないレベルである。チームとしても、全員の能力(というか才能)がうまいことバラけていて、相補的に製作を進めることができたので、非常にやりやすかった。

特にデザインは凄まじかった。チームロゴ、作品ロゴ、外観デザインなど。

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しかし結果として、この作品は賞が取れなかった。恐らく参加チームの中で最もリソースを割いたにも関わらず、半分以上のチームに用意されていた賞が取れなかった。原因としては、作成した作品が技術的に高度で完成が当日の午前中だったこと、発表練習がなかったこと、発表10分前にArduinoが故障してデモがうまくうごなかったこと、作品の見た目は美しいが地味であること、ストーリーに口を出しすぎると僕の作品になってしまうのでスライドを任せっきりだったこと、初めから実装が重すぎたこと、などが考えられる。

 

個人的な反省は3点ある。1つ目は、学生の相当のコミットメントが必要なスケジューリングにしたことである。初めからギリギリいけるくらいかな、と思っていたが女子学生にロボコンのノリを暗に求めたのは反省している。アイディア出しの段階で、できるっちゃできるけど大変であることを明確に伝え、安全率をうんと上げて対応すべきだった。2つ目は、賞が取れなかったことで落ち込んでしまったことである。僕は技術サポートのためにいるので、落ち込むべきは賞が取れなかったことではなく、デモを完動させられなかったことについてである。特に開発終了1分前、僕が配線を間違えてデモが動かなくなったので、申し訳ない。3点目は、工学系学生が2人いなくなった段階で、運営に声がけするべきだった。

僕の負担が少し多かった。

 

審査員は、申請項しか審査しないのだなあ、という自明な感想を抱いた。僕も、きちんと訴求しなければ。

 

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